どうしたらよいかわからなかった話
先日、関東地方からはそれほど遠くない某県に出かけた。
ちょっとした神社から出た時に地元の老女性に声をかけられた。
「どこから来て、どこへ行くの?」
短い会話。マスクの上から見つめる目がニコニコしていた。
「今日はS駅前まで」と答える。
「ああ〜、駅前に新しいホテル出来た所ね」
私はちょっと嬉しくなり「新しいホテルだったんですね」と。
「昔からあったホテルだったけど、流されちゃったからねぇ。」
ドキリとした。
流された という言葉に。
リアルに「流された」という言葉が普通の会話内に出てくる事に、急に胸が締め付けられた。
何と返して良いかわからなかった。
老女性にさよならをした後、何だか涙がポロポロこぼれてしまった。
観光気分でいた事が恥ずかしいような気がしたのだ。
しばらく進み、案内版と手持ちの地図を見比べていると、ザックを背負った男性2人組が「こんにちは」とニコニコして挨拶をしてくれた。こちらも地元の方だった。
老女性も男性2人組も皆とてもニコニコしていた事が印象に残った。
私はまたもどうしてよいかわからなかった。
ただ自分の目でもっといろいろ見てみたいとそう強く思ったという話でした。